介護施設って何があるの?種類が多くて分からず悩まれている方へ!~入居施設編~
そもそも介護施設って?
介護保険法が作られて以降、介護に関わるサービスや制度は多岐に渡って変わり続けています。核家族化や少子化に加え、インターネットなどによる情報の透明化により、今まで家庭内で閉じられがちだった介護の実情が浮き彫りとなりました。
現在ひと口に介護サービスといっても非常に幅が広く、介護保険で使えるサービス、障害区分によるサービス、各地方の自治体独自に行っているサービス、地域の有志でボランティア的に行っているサービスなどなど。実は専門の職種の方でも把握するのは困難な程に福祉のサービスは広がっています。そのサービスを提供する施設をひっくるめて「介護施設」と表現しますが、多くの方はどちらかというと「入居施設」をイメージされたりするのではと思います。
でも、幅広く便利になった反面複雑になりすぎた事で、いざ必要な状況となった時に、「そう言えばいろんなサービス聞くけど、何がどうなのか分からない!」となってしまうケースが非常に多いのも実情だと思います。そしてケアマネ(相談員)さんに勧められるままにとりあえずデイサービスを使っとけば…なんて事も少なくなく、実際今使えるサービスは何があって、何を使うとどうなるのか、本音では疑問を感じていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか?
数あるサービスの中でまず今回はずばり、「入居施設にはどんな施設があるの?」という部分をピックアップし、出来るだけ分かりやすく書いていこうと思います。いずれその他の通所の施設なども詳しく解説していくつもりですので、以降の記事もご覧頂けると嬉しいです。
<入居施設の種類>
まず大きく分けて、保険で入れる施設、保険では入れない施設の二つに分かれます。これは入居施設だけでなく全てのサービスに言える事ですね。
前者で代表的なのは特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームなどで、介護や福祉に興味はなくても何となく耳にされた事があるのではないでしょうか?以下代表的な入居施設の特徴を、①費用(1割負担として計算)、②日常の介護サービスがついているかどうか、③看護師対応の有無、④医師の対応が可能か、⑤看取りはできるのか、⑥その他の条件等、に分けてまとめていきます。
※費用は介護保険負担割合が1割として概算しており、自費分(食費や家賃等)は各施設で違いますのであくまで参考程度と思ってください。
※介護保険での利用の場合は原則65歳以上の高齢者(特定疾患などにより一部例外あり)
が対象となります。
「介護施設」「入居施設」と聞いて真っ先に思い浮かべられる事が一番多いのがこちらではないでしょうか?特養と略されますが、おそらくこれが皆さんの一般的なイメージに一番近い入居施設だと思います。
①費用…月10万~13万程度(各自治体によります)
②介護サービス…24時間あり
③看護師の対応…看護師常駐(日中のみのところが多い)
④医師の対応…必要に応じて医師の往診あり
⑤看取り…できるが、医療的なフォローが必要な場合はできないこともある
⑥備考…要介護度3以上でなければ新規の入居は不可
まず何より入居申し込み者が多く、入居できるのが何年後になるかも分からないという点に注意です。また、厳密には広域型(市民以外でも入れる)と地域密着型(市民でないと入れない)に分かれたりなどで費用や対応の範囲も変わってきますし、医療的にどこまで対応できるかについては意外にもそれ程重度まで対応できる所は多くなかったりします。特に吸痰が必要であったり、インスリンの管理や人工透析を受けている場合などは、看護師の配置によって受け入れの判定がまちまちです。正確な情報は見学相談の際にしっかりと確認すると良いと思います。
2)介護老人保健施設
老健と略されますが、この施設は入居施設ではあるものの、「在宅生活に戻るのに必要なリハビリを行うため一時的に入居を行い、心身に必要なケアを受ける施設」という事になっており、特養などとは違いずっと入居できるわけではありません。また、こちらの施設はデイサービス(正確にはデイケアと言いますが)が併設してあり、退去後も必要があればデイケアにてリハビリ活動を受ける事が出来ます。
①費用…月11万~13万程度(各自治体によります)
②介護サービス…24時間あり
③看護師の対応…看護師常駐(日中のみのところが多い)
④医師の対応…原則常勤(夜間は必要に応じての対応になる)
⑤看取り…できない
⑥備考…要介護度1以上でなければ入居できない。また、医師から在宅復帰するにあたって老健でのリハビリが必要であるとの診断を受ける必要がある。
ちなみに、老健の最大の特徴は医療的フォロー体制が充実しているところです。特養と比較しても、看護師や医師の配置が厚く、リハビリ専門のスタッフが配置されているため「在宅での生活が出来るようにしっかりリハビリをしておきましょう!」という意図が明確に分かります。
3)グループホーム
正式名称を認知症対応型共同生活介護といいます。何のことやら余計に分からなくなりそうな名称ですね。一言に要約すると、「認知症によって在宅での生活が困難になった方が、専門のスタッフの支援を受けながら少人数のグループで生活する施設」という感じになります。
①費用…月11万~15万円程度(入居一時金や敷金などは施設による)
②介護サービス…24時間あり
③看護師の対応…基本的に看護師はいない
④医師の対応…なし(往診を委託しているところもある)
⑤看取り…積極的に行うところが多いが、原則医療行為はできない
⑥備考…地域密着型の施設なので、原則住所のある市町村の施設しか入居できない(住所地特例などの例外はある)
特色としては、小規模ゆえに無駄なバタつきや刺激が少なく、スタッフの人数も手厚めであるため、大規模施設と比べるとゆったりと落ち着いた雰囲気であることが多いという点。そして、認知症ケアを学んだスタッフが管理者を務めるため、認知症状への理解を得やすいという点です。また、部屋代などの自費の項目に差があるためか、私が回らせてもらった数か所だけでも月額13万~20万弱と、かなり金額に差がありました。実際に検討されている方は見学の際に正確な見積もりをご確認頂いた方が安心だと思います。
4)有料老人ホーム
最後は割と名前だけはよく聞く(?)有料老人ホームです。正直「どんな環境でどんなサービスをしてくれてどれだけお金がかかるんだろう?」と多くの方は思われているのではないでしょうか?それもそのはず、有料老人ホームは各施設によって内容が全く違うため、一部では介護までやってくれて、一部では車いすになったら退去させられて、また一部では入居金に一千万円かかった、など等様々な体験談が飛び交う訳です。下記には大まかな区別だけ記載しますので、参考程度にでもなれば嬉しいです。
Ⅰ)住宅型有料老人ホーム
①費用…10万~15万程度(入居一時金、敷金などは施設による)
②介護サービス…なし(必要時には別途介護オプション利用するか、外部の介護サービスと契約が必要)
③看護師の対応…基本的にはなし(施設により看護師在中を売りにしているところもある)
④医師の対応…基本的にはなし(提携医が往診を引き受けている場合が多い)
⑤看取り…殆どの場合は対応していない
⑥備考…あくまで高齢者アパートとして部屋を借りるイメージのため、入居時に自立に近い方しか入居できない事も多い。多くの場合介護オプションが設定されていたり、訪問介護(ヘルパー)と契約して別途介護サービスのプランを立てて対応する事になる。また、一定以上要介護度が重くなると退去せねばならなくなるため、認知症状が激しくなってきた場合などにも転居先を再考せねばならない事があります。ちなみに、上記の費用はあくまで介護サービス抜きの金額のため、もろもろ諸経費を入れるとあっという間に20万を超えてしまっているというケースも耳にしますので、「いずれこういう状態になった時にはどれくらいするんだろう」というシュミレーションで参考費用を提示してもらっておく方が安心かも知れません。
Ⅱ)介護付有料老人ホーム(特定施設)
①費用…15万~25万程度(入居一時金敷金などは施設による)
②介護サービス…あり
③看護師の対応…日中のみ配置しているところが多い
④医師の対応…基本的にはなし(提携医が往診を引き受けている場合が多い)
⑤看取り…対応しているところもある
⑥備考…24時間基本的な介護サービスがついているため、特養などと同じように生活すべてをサポートしてもらう事ができる。しかし、デメリットとして外部の介護サービス(デイサービスや訪問介護など)を利用したくても出来なくなります。
上記の通り、「有料老人ホーム」の看板を見ただけでは区別がつかない事も多いため、事前の問い合わせの際に確認をしておいた方が良いでしょう。特養などと比べると高額になる傾向が強いですが、その分独自のサービスや価値(ロケーション、立地、温泉がある、ジム完備、シアター付、時期のイベント等)を自由に加えている施設が多いです。しかし、一時期問題に取り上げられていた入居一時金や敷金の返金に関する事項には、くれぐれも文書で確認をとっておいた方がトラブルを避けられると思われます。
以上入居施設をいくつかピックアップして大まかな概要をまとめました。あくまでごく一般的な内容でまとめていますので、すべての施設が当てはまる訳ではありません。もし身の回りに実際にそこで働いでいる方や入居している方のお話を聞ける機会があれば何よりも信用できるかなと思います(笑)他の施設についてはいつか機会があれば個別に記事にするかも知れません。今回も大変長くなってしまいましたが、「よく聞くけれど名前を聞いても全然区別がつかない」というお悩みに、少しでも参考にして頂ければ幸いです!ではでは~